夜が明けぬなら、いっそ。




「お前とはどこか同じ匂いを感じるんだよ、…ただそれだけ」


「…血の匂いということか」


「もっと情緒的な比喩は無いのかい。間違ってはいないような気はするけどね、だけど間違ってる」


「よく分からない。どういうことだ」



ここはもちろん蔵の中。

布団が敷かれていなければ、蓙(ござ)ですら用意されていない。

硬い土に背中が痛くなりそうだが、なぜか私の頭は景秀の腕によって支えられていた。


格子から冷える空気がすきま風になって入ってくる。

そんな私の身体を冷さぬように羽織まで被せられていて。



「探るな小雪。それ以外の理由を探すってのは、人斬りが一番しちゃならないだろ?」


「…そうだな」



探っているつもりは無かった。

ただ単に知りたかっただけだ。

徳川に支える暗殺者の男が、どうしてこんな小娘と一緒に行動しているのかと。



「…けいしゅ、」


「……なに?」


「明日から、どうするつもりだ。あの土方とやらは厄介な気がする」



暗殺者ということを話すつもりは無いだろうが、あの芸者を殺した理由は話さねばならないだろう。

でなければ土方とやらは何をしてくるか検討もつかない為に逆に面倒だ。



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