夜が明けぬなら、いっそ。




「土方さん、そろそろ折れてあげましょうよ。これ以上の話は彼等にとっても酷じゃないですか」


「甘ぇんだよ総司、てめえはいつも」


「だとしても、この人のおかげで僕が人を斬らなくて済んだのは事実でしょう。
それに僕だって情けない話ですけど、ホッとしているんですから」



悲しげに笑ったのは沖田という青年だった。

昨夜、芹沢に女を斬れと命令されていた若き男だ。


にこやかに笑う笑顔は青年らしさは不思議と見えず、なにかを隠すようなその顔は似ていなくとも誰かにそっくりだ。



「…どうする近藤さん。このまま見過ごしていい奴等だと俺は思わねえが……って、」


「うぐっ、うっ、すまない、」


「………勘弁してくれよ」


「だってトシぃ…、こんなに、こんなにも健気な兄弟も中々いないぞ、素晴らしいじゃないか…!」



泣いている。

厳つい男が、岩のような顔をした男が、えっぐえっぐとえずきながらも涙を流していた。



「確か3日は水しか飲んでいないと言っていたな」


「…え、あ、…はい」


「少し待っていてくれ、」



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