夜が明けぬなら、いっそ。
「景秀さん、」
「ん?なにかな」
そんな中、そう声をかけたのは沖田だった。
穏やかな顔をしているというのに何かをずっと考えているようだった青年。
それを景秀へとぶつけに来たっぽいのだ。
「僕と手合わせ願えませんか」
「俺?やめとくといい、下手したら殺してしまうかも」
はははっと、笑って答えた隣の男。
この和んできた雰囲気をぶち壊すように放った景秀の脇腹、思わず肘を食い込ませた。
すると周りの男達は腹を抱え込むようにして笑い出す。
「おいおい、うちの総司をナメてもらっちゃあ困るな。こいつは優しい顔してるが、9歳で免許皆伝してるぜ」
「さすがに返り討ちに遭ってもおかしくねーっての!」
だとしても景秀は「そうかもしれませんがね」と言って、続ける。
「君は人を斬ったことがないだろ?どんなに優れた剣士だとしても、いざとなったら寸前で怖じ気づいて剣を止めてしまうよ。
そういう剣豪を俺は何人も見てきているのでね」
そこを俺が迷わず一突きさ───。