夜が明けぬなら、いっそ。
景秀side




「お、危ない」


「隙だらけですよ景秀さん、」


「あえて作ってやっている隙だと理解してくれないか、沖田くん」



狭くはない道場。

さすがに真剣で手合わせとはいかず、木刀の打ち合う音が響いた。



「…本気でお願いします。それじゃあ何の意味もない」


「だからそうしてしまうと誤って殺してしまうかもしれないんだよ」


「だとしてもです。僕だって、それ覚悟でお願いしたんですから」



屯所を見て回るって、ここは狼のような怖い男しか居ない場所だ。

小雪は自分を女だと自覚していない鈍感なところがあるから、やはり心配だ。


そんな余所見を弾き返すように沖田の剣が巧みに向かってきた。



「───…今のは危なかった、本気で」


「逆に僕に殺されていたかもしれませんね」


「それはないね。確かに筋は驚くほど良い、けれど君の剣はまだ己を守る為の剣だ」



きっと彼が俺から教えられたかったことは、これなんだろう。

ピタリと目の前の動きが止まった。



「…あなたと僕は、なにが違うんでしょうか」



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