夜が明けぬなら、いっそ。
まるで迷子になった幼子だ。
早く人を斬れるようにならなければと自分で自分を常に追い込んでいるのに、まだ迷いを拭い切れていない。
それが俺との決定的な違いだろう。
「君の剣は己を守るため、俺達の剣は人を殺すため。単純な話だよ」
「俺…“達”…?」
「あの子、俺の連れで弟の小雪。あの子も俺と同じで人を殺すための剣を持っている数少ない同胞さ」
まぁ弟ではないし、女の子なんだけども。
だとしても愛想の良さも俺と同じだったらいいのに、と思うけど。
あのぶっきらぼうで不器用な性格も小雪、いやトキの良さとして俺は見ている。
「あの子は幾つですか。男にしては少し幼いように思えますが」
「そうそう、まだ尻の青い子供なんだ。本人は大人ぶってしまって全く困ったものだよ」
「…でも、人を殺せるんでしょうあの子も」
この青年はまだ20に満たないくらいか。
俺が彼程のときは既にわざわざ数えるのも面倒なくらいの命を殺していたっけなぁ。
この青年もまた、数年すれば同じようになるんだろう。
「出来ればさせたくないと思っているよ、それは俺が一番ね。
だけどいつか本当に最後ってとき、───…それは小雪が俺を殺した時かな」