夜が明けぬなら、いっそ。
「……なんの用だ」
「生憎、俺の部屋はこっちなんでな」
「嘘をつけ。この先は厠しか見えないが」
「……」
さっきからついて来る男が1人。
ついて来る、と言うよりは私の動きを見張ってると言った方が正しいか。
これでは落ち着いてゆっくり屯所とやらを拝見出来ない。
「土方、だったか。お前は豆腐のように肌が白く顔は女みたいなわりに頭が固すぎる」
「うるせえ。そんなてめえは何モンだ」
「教える義理はない」
「あんだろうが」と、吐き捨てられた言葉は舌打ちとなって消えた。
「なぜ女が刀なんか差してやがる。常世ってやつぁそんなにも物騒だってのか?」
「……」
初めてだった。
こいつは見破ってきた、もちろん常に隠しているつもりは無かったが今日は別。
逆に見破られるなと景秀には釘を刺されていたというのに。
「…なぜ気づいた」
「俺を誰だと思ってんだ」
「女に人気な壬生狼か。町人からはかなり罵倒されていたように見えたが」
確かに花街では土方は女に人気だったような気はする。
けれど町人には軽蔑的な目を送られていた。
まぁそれはほとんど芹沢 鴨に問題がありそうなのだけど。