夜が明けぬなら、いっそ。
「…まだまだ俺達ゃこれからだ。まずは芹沢をどうにかする、それから始まるんだよ」
「近藤を立てろ。そうすればこの組は上手く回るはずだ」
「はっ、てめえみてえなガキに言われなくともそうしてやるさ」
近藤 勇(こんどう いさみ)という男を筆頭にするならば、きっと狼以上の名が上がるだろう。
そしてその横には、あまり勧めたくはないが、この土方 歳三(ひじかた としぞう)という存在を側近に置く。
それだけで一目置かれる立場までいくんじゃないかと人斬りながらに思った。
「…ガキ、か。なら試してみるか?」
雰囲気は作らなかった。
刀の柄に手をかける動作すら見せず、その息づかいも悟られぬよう。
瞬時に刀を抜きながら振り返った。
「…なにしやがる」
これは驚いた。
まさかそれを読まれていたとは。
抜刀している土方は青筋を立てるように唇の端を引き上げた。
ガキィィン!!と、真剣が合わさる音が縁側に響く。
「これがお前なりの挨拶か?それとも礼か?どんな教育されたらそうなる」
「…こんな教育だ」
「そりゃめでてえな」