夜が明けぬなら、いっそ。




この場合、押したとしても力の差が分かりきっていることだ。

普通ならば私の今の瞬発力で殺していた。


だったら次は刀だけじゃないところを使うのだ。

いま一番考えてもいないだろう脛や、脇腹、そこを狙って不意を突く。



「あぁいたいた、遅くなって悪いね小雪。
…って」



そこに現れた景秀。

刀を交える私達の間に割って入るように鞘に納めさせた。



「良かったじゃないか、土方さんと仲良くなれたみたいだ」


「狂ってんのかてめえは。どこをどう見たらそう思うっつうんだよ」


「この子は少し素直じゃないところがありまして、ここは許してあげてください土方さん」



チッと、また舌打ち。

そんな景秀はふわっと香る石鹸の匂いに加えてさっぱりした様子だった。



「俺も沖田くんと仲良くなれてね、同じ湯に浸かる仲にまでなってしまった」


「手合わせはどちらが勝ったんだ」


「ん?そんなものはしていないよ」



よく分からないが、どうやら沖田 総司(おきた そうじ)を上手く振り切ったらしい。

だったらいい加減こんなところ早く出て行きたい。

結局は父さんを殺した男の情報すらも分からず仕舞いだ。



「確か戸ノ内って男を探してるんだったか、お前」



そう言ったのは土方だった。

なにか知っているのかと、言葉の代わりに見つめてみる。



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