夜が明けぬなら、いっそ。
分け与えるように差し出された干し芋。
京の栄えている城下町から下ってきたこの田舎では、一応町人から愛される名物の1つらしい。
「ふぅ、囲炉裏が無かったらどうしようかと思ったよ」
行灯も提灯もなければ、照らしてくれる光は真ん中に掘られた囲炉裏からの炎のみ。
しかし広くはない部屋のため、すぐに温度は上がってくれた。
「ちょっ、え、小雪?なにしてるんだ、待て、さすがに俺はそういうつもりじゃ…」
「なにを言ってるんだ。服が濡れた、乾かす」
「………嘘だろ、正気?」
「正気に決まってるだろ。このままでは風邪を引く」
服を脱いで囲炉裏の前に並べると、あわてふためくように顔を逸らした景秀。
そんなことを気にするような男では無いと思っていたのに。
第一、こいつはいつもいつも私を尻の青いガキだとか子供だとか言ってくるくせに。
「あーもう、困るなぁほんと」
「……なにをする」
「いいからそれにくるまってなさいってば」
パサッと掛けられた羽織。
それは景秀がずっと着ていたもの。
これはどうにも濡れていないらしく、上半身サラシのみの私の身体を隠してしまった。