夜が明けぬなら、いっそ。
「…それにしても、サラシは巻いてるんだ」
「なにかと楽だからな」
「男のふり?」
「あぁ。女で人斬りと言うよりはナメられずに済む」
このサラシを巻いて髪を1つに結い上げるだけで見破られはしないのだから。
まぁ、どこかの土方とやらには一発で当てられてしまったのだが。
「ゴホッ、ケホッ」
「小雪?」
「…平気だ。少し灰に噎せただけだ」
「そういえば前もしていたじゃないか」
そんなこと忘れた。
一々覚えている方が珍しい。
この妙な怠さと微熱は、風邪に決まっている。
「小雪、」
「……なんだ」
「ほら、」
両手を差し出すように広げてくる。
それを私にどうしろと言うのだ。
まさかその中へ誘っているのか…?
「…断る。お前の羽織があるし平気だ」
「遠慮するなよ」
「お前に遠慮など面倒なこと誰がするか」
「…まったく素直じゃないんだから」
ぐいっ。
思ったより強い力で引かれ、気づけば無駄な動きひとつなくポスンとされるがまま。