夜が明けぬなら、いっそ。




「そのときは普通の女の子として生きればいい」


「…そんなこと、今さら無理な話だ」


「無理ではないよ。だって君は望んで今の自分になったわけじゃないだろう?」



わからない、そんなこと聞かれても分からない。

ただ父さんが喜んでくれるから。

物心つく前から既に暗殺者として教育されていたのだ。


それを今さら、こんなにも命を雑に扱ってきた罪人が普通の女として生きるなんて許されるはずが無い。



「…こんなにも柔らかいし温かい。小雪は普通のかわいい女の子だ」


「っ、変なところを触るな、」


「これは不可抗力って言うんだ。悪いね」


「斬られたいのか」



女の子がそんな物騒な言葉を使ってはいけないよ、と。

そんな扱いをしてくるのなんかこいつだけだというのに。



「わっ、」



咄嗟に沈黙が広がった。

その男の腕の中、じたばた暴れれば逆効果だったと。


今の声は。

か弱く弱々しく、子供のような間抜けたる声は紛れもなく私からのものだった。



「…おい、苦しい」



ぎゅうっと、私の肩に顔を埋めるように背中から加わった。



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