夜が明けぬなら、いっそ。




「…あんなにも無邪気で笑顔が可愛い女の子だったんだ」


「───…え…?」


「小雪、今日の夕餉はどうしようか」



切り替えられるはずがないだろう。

それでも変に探ることは私達が一番にしてはいけない。


私達は暗殺者だ。

もしかするといずれ、お互いにお互いの命を奪い合う関係になるかもしれないのだ。



「…魚を捕ってくる」


「魚?」


「近くに川があった。私は得意だ」



気にしてはいけない。
気になってもいけない。

それなのに人の温もりというのは厄介だ。



「すごいね、釣りか。俺も共に行こう」


「手掴みに決まってるだろ」


「え。」



驚いた顔を気にすることなく置いて、立て付けの悪い扉を開ける。


昨日よりは雪も治まっていて風もない。

快晴とは言えないが、魚を捕るに問題はなさそうな天候だった。



「…何匹目?」


「5匹だ」


「俺はまだゼロだよ。それに家族は2人なのに倍以上だなんて、よく働く子だねぇ」


「……」



チャポンっと、籠に入った魚が跳ねた。


家族……。

そんなサラッと言われた言葉に反応してしまうなんて情けない。



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