夜が明けぬなら、いっそ。
死体が転がっているというのに怯えもしない、むしろ余裕そうに手を合わせていたくらいだ。
たったそれだけで男がどの程度の人斬りなのかを察する。
「あんたが巷で噂の十の鬼?こりゃまた随分とめんこい鬼さんなことで」
「…なんのことだ、」
「あれ?違う?十を殺す鬼で十鬼(とき)。君のことだろ?」
そうだけど、違う。
まさか自分の名前にそんな由来があったとは知らなかった。
十を殺す鬼……十なんて可愛いものではないと笑いそうにもなる。
「そんな意味はない。トキ、だ」
「うーん似合わない。明日から雪にしよう、───そうだ!小雪!」
「……」
なにを言ってるんだ、こいつは。
顎に手を当てて何かを考え出したかと思えば、くだらないことを言ってくる。
「小雪、まだ子供だ。それに剣士にしては線が細い。どうして刀なんか持っているの?」
「…15だ。とうに元服している」
「俺からすれば尻の青い餓鬼だね」
別に気にもならない。
普通ならば「だったらお前は何歳だ」と聞くだろうけど。