夜が明けぬなら、いっそ。




合わせるんだか逸らすんだかどちらかにして欲しい。

心無しか暗がりの中でも赤い顔をしているように感じる。



「そ、それよりお前達の関係は…なんだ!」


「ん?なんだって何が?」


「若い男女が2人ってことは……きょ、兄妹だよな…?」



女物の着物は濡れてしまったから、今は元の着物を着ている。

けれどその姿は見ていたため、女と認識はされているらしい。



「そう見える?」


「違うのか!?」


「どうだろうねぇ。まだ俺は何も言っていないよ」



あぁ、これは景秀の玩具になってしまったみたいだ。

コロコロと分かりやすいくらい変わる表情は確かに退屈はしないが、阿保らしい。



「こ、小雪は好いている男はいるのか!?」


「……気になる男なら居るが」


「え、そうなの?」



いち早く反応したのは連れの男。

まさか私の口からそんな言葉が出るなんて想像もしていなかったのだろう。


好いているという感情がどういうものかは分からないが、気になっている男なら私だっている。



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