夜が明けぬなら、いっそ。




あぁ、なるほど。
心を殺すのが私達だから。

そう言われればそうかもしれない。



「おい、2人は人斬りなのか…?嘘だろ…?」



存在を少し忘れていた。

スッと視線を移してみると、さっきまで一番元気だった少年が誰よりも静かだった。



「なぁ小雪!嘘だよな!!そうなるとオレは人斬りと飯を共にしてたってことになっちまう…!!」


「…不味いのか、」


「そんなことねぇよ!オレはお前みたいな雪みたいに可愛い子を見たのは初めてなんだ…!!
そんな女が人なんか斬るはずがねぇ!!だからそんなのあるはずない!そうだろ!?」



ガクガクと肩を揺さぶられる。


そんなふうに思ってくれていたとは知らなかったし、今になって気づいた。

この数馬という男が私に持つ感情こそ、“惚れている”ということなんだと。



「お前は私に惚れているのか…?」


「っ!おう!一目惚れってやつなんだろうな…!オレはお前が好きだ小雪…!!」


「……あり、がとうな」



好き、だと。

その深い意味はやっぱり分からないが、だとしても誰かに好かれるというのは変な気分にさせてくる。



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