夜が明けぬなら、いっそ。




「お前は小雪だ。昔から、小雪なんだよ」


「…トキだと言っているだろう」



やはりお前はくどいんだ、景秀。

そんなだと見た目が良くても女に嫌われる。



「おいで小雪、寒いだろ?」


「……平気だ」



慰めなんかいらない。

これで現実に戻されて感謝してるくらいなのだから。

あんな人も殺せないような情けない男に好かれて、迷惑なのはこちらだ。



「小雪、」


「いらないと言ってるだろ!!」



あの目を見ただろう、お前も。
あんな目を送られる存在なんだ私は。

だから全てが終わったら普通の女に戻るなど、そんなの出来るはずがない。



「…悪い、もう私は寝る」



昼間、川で水を浴びたようなものだから今日はこのまま寝られそうだ。

布団と言えるまで立派ではないが薄い座布団があった為、昨夜はそこに2人並んで寝た。


そのときも景秀は私を引き寄せるように抱き締めていたか。



「小雪、お前はもう刀を捨てろ」


「…なにを言っている、」


「今日、捨てていい」



それをどうしてお前が決めるんだ。

捨てていいって、意味が分からない。



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