夜が明けぬなら、いっそ。




「…わかった」



お前が何もない潔白だということを証明してやる。

こんな茶番に付き合う時間など、正直私にはないというのに。


明日、晴れてもそうじゃなくても常陸国、水戸へ向かおう。



「───…ゴホッ!!」



立ち上がって、そいつの背中へ向かおうとした瞬間だった。



「ゴホッ…!はっ、ゲホッ…!」


「小雪…!!」



込み上げる嘔吐感、溢れ出る冷や汗。

それは冷えたからとか具合が悪いとか、そうではない違和感があった。


立っていられなくなって踞ったところを支えるように手を伸ばしてくる。

意識が朦朧として、そいつの顔さえハッキリ映せない。



「はぁっ、はっ、…けいしゅ、くるし…い…、」


「何故だ、小雪…お前、もしかして……」


「ゴホッ───!!!」



咄嗟に押さえた手が血に染まった。

こんなものは誰よりも見慣れていたものだ。


それでもまさか自分から出ているものだとは、すぐには信じられなかった。



「小雪…っ、小雪…!」


「…うるさい、へいき…だ、少し疲れが溜まっているだけだ…」


「蘭方医だ、今から町へ行くんだ…!」


「やめ…ろ、」



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