夜が明けぬなら、いっそ。




とりあえず片っ端から行くしかないかと末端の店へ聞き込みに向かえば、店主は迷惑そうに手を払った。


そこは1つの小間物屋。

女の簪や櫛などを扱う、商店街には必ずあると言っていい店。



「あの野郎…っ!うちの目玉商品を奪いやがった…!!」


「……」


「ほら邪魔邪魔!!伊佐だっけか?そんな男知らねェな!ただ、俺は村一番の情報屋と仲が良いのは確かだが…!」



きっと泥棒にでも入られたのだろう。

目玉商品と言っていたし、店主は他に盗られたものは無いかと店の商品をくまなく隅々まで調べている。


それにしても……。



「村一番の、情報屋…?」



だったら話が早い。

直結で知らなくても、その情報屋を紹介してくれれば良いだけだ。

私の立場からしてみれば。



「店主、その情報屋とやらは───」


「小雪」



ぽんっと、私の肩に手を乗せたのは同行していた連れだった。

にこやかな笑みを浮かべて、私のやり方が間違っていると言いたいのか、首を横に振った景秀。


そして右往左往に店内を見回る店主の元へ軽やかに向かった。



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