夜が明けぬなら、いっそ。
「おじさん、もしかして盗人ですか?実は俺達は江戸からの使い手でして、なんでも屋…いわゆる万屋を受け持っているんです。
よろしければ俺達が犯人を取り押さえて来ますよ」
「おい、なに適当なことを、」
「本当か!?ついさっきなんだ…!向こうの方へ逃げて行ったから、まだ付近に居るはずだ…!!」
私の戸惑いより先に、身を乗り出すようにして景秀の手を握った店主。
そんな顔をするくらいに大切な品物が奪われてしまったらしいのだ。
ここはもう、そいつの言うとおりにするしかないか…。
「その代わり交換条件です。もし俺達が盗まれた商品を取り返した暁には、その村一番の情報屋とやらに会わせてください」
「も、もちろんだ…!頼む!あれはうちの看板商品なんだ…!お願いします万屋さん…!!」
「交渉成立ですね。さぁ小雪、一仕事しようか」
なんの一仕事だ。
こんなの、ただの人助けだ。
万屋なんか営んでいなければ、使い手でも何でもない。
ただ暗殺任務なら快く受け持つ、そんな物騒な人斬りではあるとしても。