夜が明けぬなら、いっそ。
「ではおじさん、犯人の身なりや特徴を出来るだけ教えて頂けますか」
「はっ、はい…!」
それから店主から聞いた特徴としては、男にしてはかなり小柄な背丈だったという。
私より小柄かと問えば、すぐに頷くほど。
そして紫色の手拭いを頭に被せて行商者に紛れるような薬箱を背負っていたと。
顔は俯いていてよく見えず、外見の特徴はそれくらい。
「───と、まぁこれだけあれば十分だね小雪」
「あぁ。日没までには見つかるな」
「そう?俺はもっと早い方に賭けるよ」
なんて、私達の会話に店主は大袈裟かと思うくらい頭を下げた。
こんなにも情報がある任務は初めてだった。暗殺任務でも、相手の歩き方の特徴などから探り当てるしかなく。
持ち物や身なりが分かっている標的は珍しい。
それはやっぱり景秀も同じことを思っていたようで、どこかつまらなそう。
だからこそ伊佐という男は名前しか分かっていないから厄介なのだ。
「よしっ、これで母ちゃんに贈り物が出来たぞ…!」
「悪いね坊や、ちょっといいかな」
「な、なんだお前ら…!!」