夜が明けぬなら、いっそ。




「今も少し火照っているね。顔も赤い、目も潤んでる」


「…平気だ」


「……」



なんて言ってるけど。

ほら、こうして気づいた時には君は俺と同じ布団の上で横になっている。


手を伸ばして腕の中に引き寄せても警戒されることも少なくなって、やっぱり無防備なんだよ小雪は。

もっと自覚するべきだ。



「…佐吉のこと、…考えてたんだな」


「ん…?」


「…あいつの母親がいつか、」


「言わないでいい。やめよう、この話は」



あんなのはただの同情心だ。

孤児として生きていた俺達ならその辛さを知っているから、だったら出来ることをしておこうと。


どちらにせよ、あとはあの店主の判断だからどうなるかは分からない。

あれは徳川の名前を使ってまでもすることだったのかと、思い出すと笑えてしまうけど。



「変わってやれたらいいのにな…」


「…なにをだ」


「…全部だ」



お前の全部。

俺が背負ったっていい。


労咳だって、まだ恋の1つや2つもしていない女の子に患わせることか。

それどころか同い歳の男にはあんなにも冷たい目を向けられて。



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