夜が明けぬなら、いっそ。
コツンと、試すように額同士を合わせてみた。
ピクッと引きそうになった少女の肩を押さえる手は既に背中へ回っている。
「…まぁそれもそうか。笑顔ってやつは自然に出てしまうものだからね」
「……お前は常にだけどな」
「ははっ、でも今は違うって分かるだろ?」
お互いの一息一息がふわっとかかる。
普段一つに結っている髪を下ろすと、俺より長い小雪の柔い黒髪。
「っ、…もう、寝る」
「駄目だ」
「…駄目って…なんだ、」
その顔は駄目だ。
その火照りも潤みも、病だけじゃないだろう?と、探るのだって駄目だ。
俺達には許されないことの方が多すぎる。
「…俺ね、小雪。岡田 以蔵に会ったことあるよ」
「!!本当か!?どこでっ───わ…っ」
ぎゅうっと、閉じ込めた。
苦しいって言われたって緩める気は無かったし、岡田の名前で君の笑顔が映ったことに腹立たしい。
「な、なにするんだ……、今のは嘘か」
「…どうだろ。秘密」
「…ズルいぞお前」
「悪いね」
接吻は……駄目だよな、たぶん。
このまましたとしたら、駄目なのは俺になってしまうかもしれない。