夜が明けぬなら、いっそ。
「必ず何かあったら俺に言うこと。そして絶対に無理はしないこと、分かった?」
「…お前は私の保護者か」
「そうだよ保護者だ」
いや違うだろ。
数ヶ月を共に歩いただけで保護者だなんて、どれだけおこがましい奴なんだ。
けれどそれくらい、心配をかけてしまっているということ。
「…善処する」
「少しでも苦しかったりしたら俺を頼ってくれていいから」
「…わかった」
行くぞ、息を飲むように合図。
港に散らばる役人や商人に紛れるように私達も溶けた。
「ん?見ねェ顔だな。お前らはどっちだ?」
「…どっちとは」
「なに言ってんだよ。コレか?それともコッチか?」
すれ違った男は身ぶり手振りで何かを表してくる。
くいっとお猪口を傾けるような動きと、ポンポンと自身を叩く動き。
……なるほど。
薬か、人身か、売るのはどっちだ?ということか。
「私達は───」
「すみませんねぇ、俺達は新人の下っぱでして。今日は伊佐さんにお届け物があって来たんです」
「ん?そうなのか?伊佐ならさっき向こうで見たぞ」