夜が明けぬなら、いっそ。
酒を飲む動きは止まり、スッと鋭い眼差しが捉えてくる。
だとしても怯むことなく聞き込み続行だ。
「全く、あいつも惜しいことをしたモンだ」
「惜しいこと…?戸ノ内は何かしようとしていたのか」
「あぁ、育て上げた十の鬼っつうガキが居るって言ってよ」
「…十の…鬼…、」
それは私だろう。
やはりそんな由来だったのかと落胆するより先に、父さんが誰かに自分のことを話してくれていた喜びの方が大きかった。
「これがまた一番洗脳されてくれたって喜んでてな、高く付くだろうからって売ろうとしてたんだあいつは」
「……なに…?」
「しっかし、呆気なく殺されたとは驚いたぜ。まぁ戸ノ内もそれくらい浮かれてたからな」
売るつもりだった…?私をか…?
いやそんなはずがない。
だって父さんは自分のために、いずれは国のために働く暗殺者として私を育てていたつもりだ。
「…戸ノ内は小さな藩のとある役職だったはずだ。それはありえない」
「小さな藩?馬鹿言え、あいつは立派な将軍家の手下じゃねェか」
「……は?」