オトメは温和に愛されたい
 ここ最近、兄と呼ばれることにやたら抵抗を見せていた温和(はるまさ)を思い出して、絶対そうだと確信して、言葉に詰まる。

 思い当たる節、ありました……。ごめんなさい。

温和(はるまさ)、いつから……なの?」

 そう思い至ったら、確認してみたくなった。
 温和(はるまさ)が、いつから私を好きでいてくれたのか。

「いつからって……何が?」

 温和(はるまさ)は分かっていてワザと気付かないフリをしている気がする。
 そう感じた私は、あえて温和(はるまさ)の質問には答えずに、別の言葉を続けた。

「私はね、小さな頃から自分を可愛がってくれるアナタのことが大好きで……その好き、がいつ恋心になったのかも分からないぐらいずっとずっと想ってるよ? 物心ついて気が付いたら、いつも温和(はるまさ)のこと、目で追ってた……」

 私のセリフに、温和(はるまさ)が照れているのが分かった。最初は私の方を見て聞いてくれていた彼の視線が、堪えきれないようにふと逸らされたから。

「バっ、バカ音芽(おとめ)。いきなり何なんだよ。ホント恥ずかしいヤツだな……」

 向こうを向いたままつぶやかれたセリフが、素直じゃない温和(はるまさ)らしくて可愛いなって思ってしまった。

 私、本当に温和(はるまさ)に愛されているんだって信じても、いいよね?

 温和(はるまさ)が、あんまりにもあからさまに照れるのが愛しくて、私、意地悪したくなっちゃった。

 つい出来心で、視線をそらしたままの温和(はるまさ)の背中に、後ろからギュッと抱きついて、耳元で繰り返したの。

「――で、温和(はるまさ)は……いつからなの?」
 って。
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