オトメは温和に愛されたい
 え? それってもしかして……温和(はるまさ)が私を好きになった時期が、私と同じような感じって……意味?
 ひゃー、温和(はるまさ)ってば、もしかして、ものすごーく私のこと、好き……だったり、しますか?
 
 そう思い至ったら、一気に照れてしまった。
 ブワッと顔が熱くなって、あまりの恥ずかしさに温和(はるまさ)から視線を逸らさずにはいられない。

音芽(おとめ)、こっち向けよ」

 それなのに、温和(はるまさ)はそれを許してくれなくて。そっぽを向いた途端にそう声をかけられて、頬に触れられた。
 それで気がついたの。さっきまで私の両手を押さえていた温和(はるまさ)の手が解かれていて、私の手は自由だ、って。

 そのことに少し安堵した私は、乞われるままに彼の方を見て、思いのほか真剣な顔でこちらを見つめる温和(はるまさ)と目があって、ドキッとする。

「はる、まさ?」

 名前を呼んで、彼の視線に吸い寄せられるように、私を見下ろす温和(はるまさ)の頬にそっと触れたら、それを合図にしたみたいに彼の顔が近づいてきた。

 思わずギュッと目をつぶったら、優しく口付けられて。

 息ができないようなキスになるかも?って結構構えたけれど、案外すぐに唇が離されて、代わりに耳元に温和(はるまさ)の吐息がかかる。

音芽(おとめ)、……いいか?」

 低く切ない声で問われた言葉の意味が分からなくて、私はきょとんとしてしまった。

「いいって……なに?」

 小さくつぶやいてから、ハッとする。
 もしかして……そういう……?

「あっ、ちょっ、でもっ」

 ソワソワと身じろぎながら温和(はるまさ)を見上げたら、彼がすごく艶っぽい顔をして私を見つめ返してきて驚いた。

温和(はるまさ)……」

 思わずその顔に見惚れて動きを止めた私に、「(わり)ぃ。ダメとか言われても……もう我慢できそうにねぇわ。――音芽(おとめ)、抱かせろよ」
< 128 / 433 >

この作品をシェア

pagetop