オトメは温和に愛されたい
「わ、私っ、あのっ、スタイルよくないし……それにそれにっ」

 オロオロしながら温和(はるまさ)の手を握る指先に力を込めたら、

音芽(おとめ)、ホント、バカだな。《《お前のだから》》見たいって分からねぇの?」

 温和(はるまさ)に触れていた手首を掴まれて、もう一方の手と一緒に一纏めに押さえつけられてしまった。

「いい加減……覚悟決めろ」

 苛立ったような、切羽詰まったような温和(はるまさ)の声が耳朶(じだ)を侵食して、耳がぶわりと熱くなる。


 手の自由を奪われて、不安になった私は、視界が戸惑いにゆらゆらと揺れた。

「お前が欲しくて限界なの、俺だけかよ?」

 そんな私の瞳をじっと見つめて、温和(はるまさ)が問いかける。
 ――お前は、俺が欲しくないの?
 言外にそう込められているのは明白で……。私はその、どこか泣いてしまいそうな切なく(かす)れた温和(カレ)の声音に、ドキッとする。

「そんなこと、ないっ」

 私も温和(はるまさ)が欲しい……。

 そう意識したら、あられもない《《はしたない》》想いに、恥ずかしくて堪らなくなった。
 それを誤魔化したくてギュッと目をつぶったら、もう一度温和(はるまさ)にキスされた。

「は……る、まさ……」

 口付けの合間を縫うように彼の名前を呼ぶ。彼と触れ合うたびに愛しさが込み上げて、感情がぐちゃぐちゃに混ざり合って。何故だか分からないけれど涙が出てきてしまう。
 私が名前を呼ぶたびに、それに応えるみたいに彼から与えられるキスの角度が深くなった。

 歯列をなぞられたり、べろをすり合わされたり、舌先を強く吸われたり。
 温和(はるまさ)から与えられる刺激のどれもがあまりに気持ち良くて、少し怖い。

「んっ、あ、……んっ、はぁ」
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