オトメは温和に愛されたい
 もう、何?と温和(はるまさ)に問いかけられた私は、何と答えたらいいのか分からなくなって言葉に詰まる。

 きっと自分の中では「もうこれ以上は恥ずかしくて無理……」っていうのが本音。

 でもそれは多分正解じゃない。

 温和(はるまさ)が求めているのは何だろう?

 ――もう、我慢できない?

 ふとそんな言葉が頭に浮かんで、私は一人赤面してしまう。
 途端、温和(はるまさ)

「やらしい顔……。何考えたの?」

 って聞かれて身動きが取れなくなる。

 温和(はるまさ)、こういうときは本当、勘が鋭いの。いつもは私がどんなに気付いて欲しいと願っても、気持ちの端っこも受信してくれないくせに。……ホント、ズルイ。

「なにも……考えてなんか……」

 実際は頭の中ものすごくパニックで賑やかだけど、温和(はるまさ)に開示できるような思考回路はひとつもないよ。

「もう、やめて?とか言おうと思ってた?」

 不意に痛いところをつかれて、私は目を(みは)った。

「――図星?」

 温和(はるまさ)がニヤリと笑って、私の顔を覗き込んできて。私は恥ずかしさに彼から視線を逸らすと、「分かってるんなら……」と言葉をつむぐ。
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