オトメは温和に愛されたい
「ひゃっ――」

 温和(はるまさ)に伸ばしたままだった両手が、瞬間二人の身体で押しつぶされて、思わず変な声が出てしまった。
 温和(はるまさ)の胸板にギュッと押し当てられた両手のひらに、彼の体温と鼓動が痛いほど伝わってくる。

「はる……まさ……っ」

 思わず彼の名を呼んで、おでこを温和(はるまさ)の肩にコツンと載せたら、途端、温和(はるまさ)に両腕を取られてしまって――。
 気が付いたら、ワンピースの両袖から腕を抜き取られていた。

 今までは、前ボタンを開けられても羽織るようにワンピースを(まと)っていたのだけれど、支えを失った布地はあっけなく腰元で一塊になって、両肩があらわにされてしまう。

「あ……」

 スルンッとシフォン地が肌を滑り落ちた感触に、ゾクッと身体を震わせてから、剥き出しになった両肩に気が付いた私は、羞恥心に押し寄せられてカッと全身を火照(ほて)らせる。

 それを誤魔化すみたいに温和(はるまさ)に擦り付いて顔を隠したら、背中でプチッと何かが弾けるような感触がして――。

 ――え? 何?

 そう思った時にはブラのホックが温和(はるまさ)に外された後だった。
 支えを失ってハラリと落ちたブラの肩紐が、所在なく私の腕に引っかかっている。

 温和(はるまさ)、何て手慣れているの!?

 今、温和(はるまさ)から身体を離したら、私、確実に胸をさらけ出してしまうことになる。
 そう思ったら、そのまま動けなくなってしまった。
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