オトメは温和に愛されたい
 考えてみたら私、温和(はるまさ)に胸を見られたこと、ある――。

 でもあの時とは状況が違う、よ……ね?

 そもそもあれは事故みたいなもので、温和(はるまさ)だって胸を見ようとして服をめくりあげたわけじゃなかった。
 予期せず(あら)わになった乳房(ふくらみ)に、温和(はるまさ)がびっくりしたみたいにひるんだの、覚えてる。

 もちろん私も死にそうに恥ずかしかったけどっ。

 でも、今回は温和(はるまさ)、明確な意思をもって私の下着(ブラ)のホック、外した……よ、ね?

 そして、私もそれを望んでいて――。

 み……見られるの回避は――無理……?


***


 温和(はるまさ)に軽くトン、と肩を押されて、
「ひゃっ!?」
 考え事に(ふけ)っていた私は、いとも簡単にベッドへ仰向けに倒されて変な声を上げていた。

 は、恥ずかしいっ。

 そんなに力を込められた気はしなかったのに、こんな簡単に転がされちゃうとか……。

 どうしよう。びっくりして心臓がバクバク言ってるよ……?

 ホックを解かれたブラが、寝そべった拍子に胸からズレてしまって……私は慌てて両手で双丘(そうきゅう)を覆った。

音芽(おとめ)、手、邪魔」

 途端温和(はるまさ)にそう言われて、私は不安に揺れる瞳で彼を見上げた。

「あの、邪魔って……」

 恐る恐る言い返そうとしたら「手が邪魔で見えねぇからどけろって意味だ。――通じるだろ、普通」って目を(すが)められて――。

 もう一度ダメ押しするみたいに「音芽(おとめ)、手」って言い募られた。
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