オトメは温和に愛されたい
 温和(はるまさ)、やろうと思えば私の手なんてさっさと取り払ってしまえるはずなのに、私が自分の意思で見せるように仕向けたいみたいで。

 ドSモードのスイッチは未だにオンのままなのね……。私がそれに恍惚(こうこつ)としてしまうのを見抜かれてしまってて……オフにならない、とかじゃない、よね?

 頭ではそんな不安が()ぎるのに、裏腹にも、まるでそうだったら嬉しいな……と期待するみたいに身体の奥がキュン……と反応した。

 私はそれを誤魔化すみたいに温和(はるまさ)の視線から目線を少し横に逃すと、彼の指示に従ってゆっくりと手を下ろす。

 温和(はるまさ)に触れられたわけでもないのに、胸の先端がツンと立ち上がっているのが分かって、浅ましさを露呈(ろてい)するみたいですごく恥ずかしい。
 顔を背けていても、温和(はるまさ)が私の胸を見つめているのがひしひしと感じられて。
 なのに触れてくれないことに余計羞恥心を煽られて、全身がどんどん火照ってくるの。

 いっそのこと胸を鷲掴みにでもされたほうがマシかもしれない。

 何で見てるだけ……なの?
 ねぇ、温和(はるまさ)、何か言ってよ?

 沈黙に耐えかねて恐る恐る温和(はるまさ)を見つめたら、彼と目が合った。
 慌てて逸らそうとしたら、それを封じるみたいに尋ねらる。

「なぁ音芽(おとめ)ブラ(これ)、俺に取り払って欲しい? それとも自分で処理したい?」

 温和(はるまさ)にホックを外されたブラは、寝そべった反動で私の鎖骨の辺りにカップが所在なく載っている感じで、ついでに肩紐はまだ腕にゆるっとかかったままで――。

 そんな肩紐を、まるで(もてあそ)ぶようにいじられて……。肌を(かす)めるように温和(はるまさ)の指先が触れた瞬間、電気が走ったみたいにゾクッとした。

「や、ぁんっ」

 思わず堪え切れずに声が漏れ出てしまって、あまりの恥ずかしさに私はギュッと身体を固くする。
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