オトメは温和に愛されたい
「し、下は……温和(はるまさ)が…………脱が、せて?」

 真っ赤になりながら一生懸命そう言ったら、温和(はるまさ)が微かに口角を引き上げた。

 その表情が、そしてゾクッとするような冷たい視線が、まるで獲物を狙う猛禽類(もうきんるい)みたいだなって思ったの。

 そう気がついたら私、温和(はるまさ)に食べられてしまうんだなって実感させられてしまって――。

「――世話の焼けるヤツだな。まぁ、お前はこういうのは初めてらしいし、今回は特別に望み、叶えてやるよ。――けどな、音芽(おとめ)。脱がされる時、腰くらいは浮かせろよ?」

 温和(はるまさ)が私を冷ややかな視線で見下ろしながらそう言った。

 私はその瞳に射抜かれて、蛇に睨まれたカエルみたいに身動きが取れなくなったの。

 声もうまく出せなくて、一生懸命温和(はるまさ)の言葉に小さくうなずいて、同意の意思を伝えた。

 私の身体の横に膝の位置をズラした温和(はるまさ)が、腰元にわだかまったままのワンピースに手を掛ける。

 温和(はるまさ)の手で、さらりとした布地が腰骨、腿、膝、足首……とわざと焦らすようにゆっくと下ろされていく。

 皮膚に生地が滑るようにこすれるたび、ゾクゾクして肌が粟立ってしまった。

「鳥肌すごいけど、寒い?」

 私の太ももを軽く撫でながら、温和(はるまさ)が問うてきて――。

 寒さからの反応ではないことくらい、お見通しのはずなのに……意地悪……。
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