オトメは温和に愛されたい
 温和(はるまさ)の問いかけに、フルフルと小さく首を横に振った。

「そう」

 温和(はるまさ)は私の答えに満足したように柔らかく微笑むと、その表情とは裏腹に反論の余地なんて与えないような低い声音で問うてくるの。

「寒くないなら、全部脱がせて構わないよな?」

 そんなこといちいち聞いてこなくてもいいのに。

 私を裸にしてしまうことは、きっと温和(はるまさ)のなかでは決定事項のはずなのに、わざと私に意思確認をしてくるのは温和(はるまさ)に征服されているのだ、と私に実感させるためなんだと思う。

 私は彼の思惑にほんの少しだけ反抗したくて、彼の視線からふぃ、と目を逸らせると、「……イヤだって言ったら、脱がさないで……いてくれるの?」と聞いていた。

「……お前がそれでいいんなら」

 却下されると思っていたのに。

 温和(はるまさ)は何の未練もないみたいに私の身体からスッと離れると、そう言って私を見下ろしてきた。

 私は、温和(はるまさ)からの予想外の答えに戸惑ってしまう。
 と同時に、急に突き放されてしまったことににわかに不安を感じて、ゆらゆらと揺れる瞳を向けて温和(はるまさ)にすがるような視線を投げかけていた。

「よく、ない……」

 そうして気がついたら、そう言って温和(はるまさ)の手首をギュッと掴んでいて。

「だったら。どうして欲しいか、その口でちゃんと言ってみせろよ」

 ショーツたった一枚だけの姿で――。
 信じられないような恥ずかしい格好のままで――。
 それでも私はさらにもっと温和(はるまさ)に私のことを知って欲しいと願わずにはいられないの。

温和(はるまさ)、お願い……。全部、……脱がせて……?」
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