オトメは温和に愛されたい
「……や、優しく……して……お願っ……」

 私、初めてなの。――だから。
 
 恥ずかしさと同じぐらい不安にかられて、顔を覆って消え入りそうな声音でそう言ったら、「善処はする。けど、止められなかったら……許せ」って言われた。

 あーん。どうしよう。「許せ」って言い方、すごく好きっ。
 
 温和(はるまさ)の唇が首筋に降りてきて、かすめるように触れながら、優しくチュッと音を立てては吸いつかれる。
 あとには残らない程度に留めてくれているのがわかって、温和(はるまさ)の優しさに心臓がドキドキと高鳴った。

 首筋にキスを落としながら、胸の膨らみに手を伸ばした温和(はるまさ)が、それに気づいて言うの。

「音芽、すげぇドキドキしてる」
 って。

 指摘されたら余計にときめいて、苦しくて堪らない。

 首筋を辿っていた温和(はるまさ)の唇が、鎖骨まで降りてきた途端、今までのフェザータッチが嘘みたいに強く肌を吸い上げてきて、チクリとした痛みが走った。
 その刺激に驚いて、思わず声が漏れてしまう。

「い、っ」

 ギュッと目をつぶって温和(はるまさ)から与えられる痛みに耐えていたら「あと、付けたから……しばらくはあまり胸元の見える服、着れねぇな」って言われて。

「やだぁ、も、付けない、で?」

 あざのせいで服装を規制されるなんてイヤだって思って、眉根を寄せて抗議したら、「これ、薄れたら何度でもつけ直すから。……諦めろ」って言うの。

 そればかりか、まるで私に思い知らせるみたいに鎖骨を中心にさらに数カ所、痛いくらいに強く吸いつかれて。

 温和(はるまさ)、ひどいって思うのに、

「俺以外に肌、見せるな」

 苦しそうにそう言われたら、心裏腹にもっと沢山印を刻み付けて欲しい、とも思ってしまうの。

 私の全ては温和(はるまさ)だけのものだよ?

 素直にそう言えたらいいのに。
 
 温和(はるまさ)のこと、素直じゃないとか言えないよね。
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