オトメは温和に愛されたい
「あぁっ、はるま、さっ、ダメっ。おかしくなっちゃっ」

 ただただ痛くて怖かったときには感じなかった快感が、逆に怖くて。

「おかしく……なれよ、音芽(おとめ)。俺も……お前が欲しくて狂いそうだ」

 温和(はるまさ)が耳元で吐息まじりにそんなことをつぶやいてきて……。

 ふと視線を転じた先で、温和(はるまさ)の下半身が、痛そうなぐらい張り詰めているのが分かった。

 その熱を逃すみたいに熱い吐息をついた温和(はるまさ)が、まるで性急にことを運びたいみたいに指をもう一本増やしてきた。

「……んんっ」

 私は温和(はるまさ)の反応全てにゾクリと身体を震わせながら、二本の指を受け入れる。

温和(はるまさ)っ。わ、私っ、……痛くても……平気、だよ?」

 さっきまでそこに指が1本入れられることでさえ怖くてたまらなかったのに。

 温和(はるまさ)も限界なんだと知ったら、彼にその熱をぶつけてもらいたくてたまらなくなった。

 痛みがあったほうが、温和(はるまさ)とひとつになれたという実感が得られそうな気さえして。

「お願っ、温和(はるまさ)。も、きて?」

 途切れ途切れに一生懸命おねだりしてみたものの、温和(はるまさ)と目が合ったと同時ににわかに恥ずかしくなって、ギュッと彼にしがみつく。

 途端、彼が息を飲んだのが分かった。

「お前っ、自分が何を言ってるのか……」

「分かってて、言ってる、のっ!  ……だから、何回も、言わせないで……温和(はるまさ)の、バカぁ」

 温和(はるまさ)の首筋に額をこすり付けるようにしてそう言ったら、彼が小さく溜め息をついたの。

「――バカ音芽。少しは俺に余裕ぶらせろよ」

 吐息まじりに言って、私から身体を離した温和(はるまさ)が、ベッドサイドの棚から小さな包みを取り出した。

「俺を煽ったこと、後悔しても遅いからな?」

 言って手にしたそれを開ける温和(はるまさ)を見て、私は今更のように真っ赤になる。

 スキン……。

 温和(はるまさ)が手にしているのはまぎれもなくそれで……避妊具を温和(はるまさ)が開封したってことは――。
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