オトメは温和に愛されたい
「それより音芽(おとめ)。――身体、しんどくないか?」

 温和(はるまさ)が裸のまま労わるようにギュッと抱き締めてくれるのが心地良くて。
 でも素肌で触れ合っているんだって思うと、無性に恥ずかしくて……。

 私は温和(はるまさ)の胸元に(ひたい)をこすりつけたまま、マトモに彼の方を見られなかった。

「だ……、大丈夫……っ」

 頬が熱くなるのを自覚しながらそう答えたら、
「――そっか。けど、無理はすんなよ? お前いつもそういうの言わずに我慢するだろ」

 温和(はるまさ)はとがめるような口調でそう言ってから、思い直したように溜め息を吐く。
 それから少し間をあけたのち、躊躇(ためら)うように付け加えた。

「俺、セーブきかなくて……お前のこと酷く抱いた自覚あるから……その、心配なんだよ」

 ごめん、って小さくつぶやいてから、照れ隠しのように「――風呂、どうする? 湯、溜めてあるけど」って話を切り替える。

 私が答えあぐねていたら、温和(はるまさ)がまるで手持ち無沙汰をまぎらわせるように私の襟足をもてあそんできて――。

「……やんっ、くすぐったい」

 温和(はるまさ)の指先がやけに穏やかで、私は思わず首をすくめてしまう。

 言われてみれば、お風呂には入った方が良さそうな状態で。でも、そんなふうになってしまっていますと認めるのも何だか無性に恥ずかしくて。

 確認したわけではないけれど、布団に(くる)まれた下腹部からは、そんな気配がしたの。


「だるくて一人で入れそうにないなら一緒に入ってやるけど……? ――身体ももちろん俺が洗ってやるし」

 私がしばらく何も答えられないでいたら、温和(はるまさ)がお兄ちゃんの顔をして真顔でそう提案してきて慌ててしまった。

 子供の頃にはよく一緒にお風呂に入って頭を洗ってもらったりしてたけど、さすがに今は恥ずかしいっ。
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