オトメは温和に愛されたい
「はる、まさ?」

 きょとんとして彼を見つめたら、
「覚えてねぇとか……あれ、嘘だから。子供ん時、俺がお前に言った気持ち(セリフ)は俺ん中でもずっとずっと健在だったよ。けど――」

 そこで言葉を切ると、私をじっと見つめてきて。

「けど、その言葉がお前を縛る(かせ)になっちまってて、そのせいでお前が俺から離れられないとか……そう言うのだったら嫌だなって思っちまっただけだから……」

 不安にさせてごめんな。

 温和(はるまさ)も私と同じこと考えてたんだ、と驚いたのと同時。
 シートベルトを外してこちらに身を乗り出した温和(はるまさ)に、ギュッと抱きしめられる。

 車内とはいえ、学校(職場)の敷地内なのに。

 温和(はるまさ)っ、大胆すぎるよ……。

「は、温和(はるまさ)っ。人に見られちゃうっ」

 一生懸命身じろぎながら言ったのに……温和(はるまさ)は私の言うことなんて聞いてくれないの。

 ややして、私を抱きしめる腕をそっと緩めると、
「俺だけかよ」
 拗ねたみたいにそうつぶやいて顔を覗き込んできて……。

 私は戸惑いながら、ソワソワと温和(はるまさ)を見つめ返した。

「お前と付き合ってるって公言したくてたまらないの、俺だけ……かよ?」

 私は温和(はるまさ)の言葉に、一生懸命首を横に振った。

「ち、違っ!」

 ――温和(はるまさ)だけなわけ、ないっ。
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