オトメは温和に愛されたい
***

 間もなく朝礼が始まって、私たちは一旦話を区切った。

 今朝は校長先生から鶴見(つるみ)先生の入院のことと、彼が復帰するまでの期間、臨時雇用の先生が入っていらっしゃる話があった。

「臨時で来ていただけることになったのは川越(かわごえ)先生とおっしゃる女性のかたです。明日から早速いらしていただけることになっていますので、2年部の霧島(きりしま)先生、鳥飼(とりかい)先生、しっかり協力してあげてください」

 校長先生から直々に名指しされて、私はドキッとしてしまう。

 臨時の川越先生は鶴見先生の穴を埋めるためにいらっしゃるんだから、2年部の私たちに声がかかるのは当たり前。
 なのに朝から色々ありすぎて頭が空回りしていた私は、不意を突かれたかたちになってしまって――。

 温和(はるまさ)が「わかりました」と応えるのを聞いて、私も慌てて「はいっ!」と続けたけれど、声が上ずってとても恥ずかしかった。


 それにしても鶴見(つるみ)先生。

 代わりの先生が立たれたってことは……やっぱりすぐには復帰、難しいのかな。

 ここへ来てやっと、鶴見先生の手足の骨折が結構な重傷なんだという実感が湧いてきて、胸の奥がギュッと苦しくなる。

 あんなことがあったし、私、鶴見先生に会うの、気まずくて嫌だなって思ったの。
 でも、もちろんこんな結果を望んだわけじゃない。
 けど――。
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