オトメは温和に愛されたい
乙女な彼女と温和な彼?
「オトメとかお前、ホント名前負けだよな? 24にもなって、もっと色気のあるパンツ履けねぇのかよ」

 家路を急ぐ帰り道。曲がり角を曲がったと同時に、幼馴染みで同僚の男とぶつかった。
 なんとか一度はバランスを取り戻したものの、結局足元にあった石ころにつんのめって、前のめりに転んでしまった。膝はすりむくし、買い物して来た中身は道端に盛大にばら撒かれるし……。
 オマケに転んだ拍子にシフォン素材のスカートがめくれ上がって、白いコットンのショーツに包まれたお尻が剥き出しになるなんて誰が想像できる!?

 年齢=彼氏いない歴。誰に下着を見せる予定もない干物女(ひものおんな)の休日の黄昏時(たそがれどき)

 私は完全に油断してしまっていた。

 色気のかけらもない、おまけにレースすらないパンダのバックプリントを、よりによって大好きなこの男に見られてしまうなんてっ!

温和(はるまさ)のバカっ! サイテー!」
 大声で叫んで目の前の彼――温和(はるまさ)――を引っ(ぱた)こうとしたら、寸でのところで振り上げた手を握られて阻止されてしまった。

「俺の綺麗な顔に傷つけたらお前、明日から職員室で針の(むしろ)の上に座ることになるぜ? 覚悟は出来てんのか、音芽(お・と・め)ちゃん?」

 叩かれたところで、本人が言わなきゃ誰にやられたかなんて分からないのに、やったら公言するぞ?と言外におどしてくるとか……ホント良い性格してらっしゃいますね!?
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