オトメは温和に愛されたい
「あ、あのっ……温和(はるまさ)は身体、拭かない……の? っていうか――」

 考えてみればここは彼の家なのだから着替えてくればいいのに。

 思って、そう告げようとしたら、
「なあ、音芽(おとめ)、お前にとっての俺は……」

 温和(はるまさ)が私をじっと見つめながら何か言おうとしてきて――。
 それを言わせてしまうのが怖くて、私は思わず温和(はるまさ)のセリフを断ち切るように言葉をつむいだ。

「――しっ、知ってるくせに。奏芽(かなめ)温和(はるまさ)は私のお兄ちゃん……でしょ?」

 もぉー、やだなぁー。

 へらり、と笑いながら温和(はるまさ)を見る。私、ちゃんと笑えてる……かな?

 ね、温和(はるまさ)、お願い。さっきの言葉はなかったことに、して?

 願いながら温和(はるまさ)をじっと見つめる。

 温和(はるまさ)は、一寸後、とても冷めた目で私を見つめた。

 それからいつも通りの淡々とした声音で、
「……妹、か。そうだな。だったら――」

 自身の濡れたままのシャツを脱ぎ捨てながら私の顔を睨むようにして言い放つ。

「だったら――、俺の裸を見るのも、俺にお前の裸を見せるのも、平気だろ? 風邪ひく前に濡れたもの全部脱げよ。ついでに風呂も入って帰ればいい」
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