オトメは温和に愛されたい
「こ、これっ、恥ずかしいねっ?」

 くすぐったさにクスクス笑いながらそう言ったら、またしても吐息。

 呆れたような声音のまま「明日も仕事だし寝るぞ」ってベッドに転がされてしまった。

 2人で小さなベッドに並んで寝そべっていたら、嫌でも温和(はるまさ)とくっついてしまう。

 温和(はるまさ)の髪の毛が首筋をくすぐって、おまけに石鹸のいい香りまでしてくるの。

 ドキドキするなって言われる方が無理ですっ!

 照れ隠しに「こんな小さなベッドでも大人2人が寝そべれちゃうとかビックリね」って言いながら温和(はるまさ)の腕の中でモソモソ。

 途端温和(はるまさ)にギュって抱き寄せられるように動きを封じられて、「余裕あるな」ってつぶやかれた。

「よ、余裕? ないないっ。だってベッド(これ)、シングルだもん。温和(はるまさ)の部屋のベッドの方が大きくなかった?」

 温和(はるまさ)には今、一緒にギューギューで寝転んでいるこのベッドが、広く感じられているの?
 ふたりで寄り添ってるから?

 ……まさか冗談だよね?

 キョトンとして問いかけたら、思いっきり溜め息をつかれて、「バカ音芽(おとめ)」ってつぶやかれた。

 え? 何それ。何かすっごく心外なんですけど!
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