オトメは温和に愛されたい
 キャーッて顔を覆ってイヤイヤしたら、温和(はるまさ)が一拍置いて、どこか引きつったような乾いた声で笑うの。

 あーん。やっぱりそうだったんだ。

 温和(はるまさ)、基本的には優しいからハッキリ言わないけれど、絶対それだっ。

「ごっ、ごめんなさいっ。あのっ。次からあれ……」

 一緒に寝る時は暴れないように手足縛ってくれていいから……って言ったら、即座にデコピンをされてしまった。

「痛いっ」

「バカ音芽(おとめ)。そんなんしたら俺の歯止めが利かなくなるだろーが」

 真正面からじっと見据えられて、怒ったような照れたような顔でそう言った温和(はるまさ)を見て、自分が言ったセリフの危うさに気がついた私は、途端頬が熱くなった。

「ち、違っ。そういう意味じゃなくてっ」

 しどろもどろになりながら必死に取り繕ったら、「お前がそんなだから俺、寝不足になるんだよ」って言われて。

 いくら襲わないって言われたからって、俺にしがみついて安心し切って寝るやつがあるかよ、って吐き捨てられた。

 ん?
 ちょっと待って、ちょっと待って?
 は、温和(はるまさ)の寝不足の原因って……。

 そこで初めて、彼が性的な意味で悶々として一夜を明かしたのだと気が付いて、私は自分のしでかしたアレコレを思い返してフリーズしてしまう。

「ごっ、ごめん……なさい……」

 しゅんとしてそう言ったら、「――今夜、今日の分も含めて取り戻させてもらうから。覚悟しとけよ」って言われた。

 ひゃっ。それって……そういう意味、だよ、ね?
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