オトメは温和に愛されたい
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 川越(かわごえ)先生と温和(はるまさ)が事務的な会話を交わしながら並んで歩くのを横目に歩いていたら、いつの間にか半歩ばかり後ろに下がってしまっていた。

 川越(かわごえ)先生、どうやら昨日昼間に鶴見(つるみ)先生の入院先に校長先生と一緒に行かれたみたい。

 そこで鶴見先生本人からクラスの子たちのこと、授業の進捗状況など、ある程度の説明を受けてらしたみたいで。

 そりゃあそうよね。
 いくら何でも今朝初めて学校へ来て、朝礼後のほんの少しの時間に話すだけじゃ不安すぎるもの。

 温和(はるまさ)を真ん中に挟んで、彼の陰からチラチラと見える川越先生を見るとはなしに窺い見ながら、聞こえてくる会話をぼんやり心に留める。

 川越先生、お顔小さいし、スタイルもいいし、動くたびにフローラル系のいい匂いがするし……。

 などなど思ううちに、情けないほど気後れしてしまっていて。

 加えて温和(はるまさ)と川越先生との間に、初対面ではないような親密さを感じてしまって、ソワソワと落ち着かない。

 でも温和(はるまさ)も川越先生もそんなこと一言も言わないし……私の勘ぐりすぎだよね、きっと。

 そう思ったら、変な色眼鏡でふたりを見てしまっている自分がとても浅ましく思えて――。

 温和(はるまさ)の横は私だけの場所であって欲しいと思ってしまうのも、醜い嫉妬なんだと自覚してる……。
 なのに実際はそんな気持ちさえ抑えるのが困難で。

 胸の奥がキュッて痛くなって、何で私、用もないのに彼らと一緒に歩いてるんだろうって思った。
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