オトメは温和に愛されたい
***
ローテーブルを間に挟んで、私の向かい側に腰を下ろした佳乃花が、結局一路用と称したビールをついだグラスを私の前に置いてくれると、自分の方は噴きこぼれて量の減ったグラスを取った。
私がそれを気にして少ない方に手を伸ばそうとしたら「まだお酒、他にもあるんだから大丈夫。気にしないの!」って引っ込められてしまった。
「ごめんね」
気を遣わせてしまってるのが分かって、それが何だか申し訳ないのに、嬉しくてくすぐったい。
今日は1日中、何だか気を張って過ごしていたからか、余計にそういうふとした優しさが骨身に沁みて感じられたの。
「ねぇ音芽。そろそろ何があったか話せそう?」
2人で乾杯をしてビールをひとくち口に含んでから、佳乃花がまるで世間話をするみたいにそう切り出した。
「ね、霧島先輩に捨てられちゃうってどういうこと? あなた達、付き合い始めたばかりなんじゃないの?」
電話で泣きながら告げた言葉を改めて問われて、私はグラスをギュッと握りしめた。
「あのね……」
説明しようと口を開いただけで鼻の奥がツンとして、視界がじんわり水の底へ沈んだように揺れ始める。
「泣いてもいいから全部吐き出しちゃえ。じゃないといつかみたいに音芽、おかしくなりそうで怖い」
いつの間にか私のすぐ横に移動してきた佳乃花が、そう言ってギュッと抱きしめてくれて、私はもう泣くのを我慢しなくてもいいんだ、ってやっと思えた。
いつかみたいに、って私、何かやらかしたっけ?と思いながらも、安堵の方が勝ってその疑問はすぐ感情の渦に押し流されてしまう。
放課後の教室で、温和から先に帰ってていいと言われた時から私、ずっとずっとこんな風に声を上げて泣きたかったんだって心が叫んでいるのが分かった。
「佳乃花ぁーーーーっ!」
お化粧が落ちちゃうとか……鼻水が垂れちゃうとか……そんなの親友の前では気にしなくて良いんだって思ったら、気持ちがスーッと軽くなった。
佳乃花にギュってしがみついて、私はまるで赤ちゃんみたいに何もかも忘れて大泣きをした。
ローテーブルを間に挟んで、私の向かい側に腰を下ろした佳乃花が、結局一路用と称したビールをついだグラスを私の前に置いてくれると、自分の方は噴きこぼれて量の減ったグラスを取った。
私がそれを気にして少ない方に手を伸ばそうとしたら「まだお酒、他にもあるんだから大丈夫。気にしないの!」って引っ込められてしまった。
「ごめんね」
気を遣わせてしまってるのが分かって、それが何だか申し訳ないのに、嬉しくてくすぐったい。
今日は1日中、何だか気を張って過ごしていたからか、余計にそういうふとした優しさが骨身に沁みて感じられたの。
「ねぇ音芽。そろそろ何があったか話せそう?」
2人で乾杯をしてビールをひとくち口に含んでから、佳乃花がまるで世間話をするみたいにそう切り出した。
「ね、霧島先輩に捨てられちゃうってどういうこと? あなた達、付き合い始めたばかりなんじゃないの?」
電話で泣きながら告げた言葉を改めて問われて、私はグラスをギュッと握りしめた。
「あのね……」
説明しようと口を開いただけで鼻の奥がツンとして、視界がじんわり水の底へ沈んだように揺れ始める。
「泣いてもいいから全部吐き出しちゃえ。じゃないといつかみたいに音芽、おかしくなりそうで怖い」
いつの間にか私のすぐ横に移動してきた佳乃花が、そう言ってギュッと抱きしめてくれて、私はもう泣くのを我慢しなくてもいいんだ、ってやっと思えた。
いつかみたいに、って私、何かやらかしたっけ?と思いながらも、安堵の方が勝ってその疑問はすぐ感情の渦に押し流されてしまう。
放課後の教室で、温和から先に帰ってていいと言われた時から私、ずっとずっとこんな風に声を上げて泣きたかったんだって心が叫んでいるのが分かった。
「佳乃花ぁーーーーっ!」
お化粧が落ちちゃうとか……鼻水が垂れちゃうとか……そんなの親友の前では気にしなくて良いんだって思ったら、気持ちがスーッと軽くなった。
佳乃花にギュってしがみついて、私はまるで赤ちゃんみたいに何もかも忘れて大泣きをした。