オトメは温和に愛されたい
「私から目を離さないって言ったくせにそばを離れたのは霧島くんよ? 私、言ったわよね? チャンスがあったら逃さないって」
温和の陰に隠れていても感じる。
喜多里先輩の強い視線。
「わた、しっ、学生の頃とは……違い、ますっ!」
温和にしがみついていないと足が震えてその場にくず折れてしまいそうなくせに。
気が付けば、私は声を張り上げていた。
***
思い、出した……。
カナ兄の彼女として現れたはずの喜多里先輩――川越先生――が……。
今日みたいに放課後の教室にひとり居残っていた私に会いに来たことが、ある。
何故3年生の彼女が、階数違いの1年生の教室に、奏芽ではなく妹を訪ねて来たんだろうって不思議に思ったのを覚えている。
あの日の彼女も今みたいにフローラル系の甘ったるい香りを身にまとっていて――。
でも今と違って髪は腰まで届くくらい長かった。
カナ兄の遊び人然とした明るめの金に近い髪と違って、漆黒に近い黒髪をたたえた彼女は、何でこんな真面目そうな美人がカナ兄と?と思わせる違和感を漂わせていた。
温和の陰に隠れていても感じる。
喜多里先輩の強い視線。
「わた、しっ、学生の頃とは……違い、ますっ!」
温和にしがみついていないと足が震えてその場にくず折れてしまいそうなくせに。
気が付けば、私は声を張り上げていた。
***
思い、出した……。
カナ兄の彼女として現れたはずの喜多里先輩――川越先生――が……。
今日みたいに放課後の教室にひとり居残っていた私に会いに来たことが、ある。
何故3年生の彼女が、階数違いの1年生の教室に、奏芽ではなく妹を訪ねて来たんだろうって不思議に思ったのを覚えている。
あの日の彼女も今みたいにフローラル系の甘ったるい香りを身にまとっていて――。
でも今と違って髪は腰まで届くくらい長かった。
カナ兄の遊び人然とした明るめの金に近い髪と違って、漆黒に近い黒髪をたたえた彼女は、何でこんな真面目そうな美人がカナ兄と?と思わせる違和感を漂わせていた。