オトメは温和に愛されたい
　ふと見ると佳乃花(かのか)の背後、ぼんやりと見つめた視線の先で、カナ兄(にい)に羽交い絞めにされて暴れているハル兄(にい)の姿が見えた。

　それを目にした途端、自分がこんなにも佳乃花(かのか)に心配を掛けているのも忘れて、思わずハル兄(にい)に声を掛けてしまう。

「ハル……兄(にい)？」

　ハル兄(にい)がいつもと余りにも違って見えたから……どうしちゃったんだろう？って思ったの。
　いつも穏やかなハル兄(にい)らしくないよ？って心配になったの。

　私の声に、ハル兄(にい)がハッとしたように私を見て、私と目が合った瞬間カナ兄(にい)を突き飛ばすように腕を振り払うと、傍まで来てくれた。

　ハル兄(にい)の剣幕に、佳乃花(かのか)が思わず私から離れてよろめいて、一路(いちろ)に肩を抱き留められる。

　私はすぐ近くから、ハル兄(にい)に顔を覗きこまれた。

　ああ、ハル兄(にい)の顔、こんなに間近で見るの、何年ぶりかなぁ。
　やっぱりハル兄(にい)はかっこいい。大好き。

　そう思ってうっとりしていたら、ギュッと肩を掴まれた。

「音芽(おとめ)っ、お前喜多里(きたさと)と何があった！？」
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