オトメは温和に愛されたい
「や、やだっ。バカ温和(はるまさ)! そういうのは気付いてても言わないのが礼儀でしょう!?」

 思わず温和(はるまさ)を突き放すようにして離れてから、そう言って睨みつけたら、
(え……? うそ……)
 温和(はるまさ)が真っ赤になって視線を逸らしていて。
「お、お前こそ、そこはうまく誤魔化すのが礼儀だろ……っ」
 私は、その反応に逆に驚いてしまう。

 でも、それと同時に足をひねってバランスを崩してしまって――。

「ひゃっ」

 身体が(かし)いで、とてもスローモションに世界が斜めになっていく。

 あ、倒れちゃうっ!
 そう思ってギュッと目をつぶったら、温和(はるまさ)に抱きしめられていた。

「お前、本当バカなのかっ!? 男に向かって下着つけてないの公言した挙げ句、そいつの目の前で転びそうになるとかっ、女としての自覚なさすぎだろっ! それともあれか――」

 そんなん出来るぐらい、俺はお前にとって兄貴でしかないのかよ……っ!

 そこだけ声を小さく低められて、吐き捨てるように言われたセリフに、私は一瞬瞳を見開く。
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