オトメは温和に愛されたい
***

「でね、結局それっきりなの」

 金曜の夜――。
 温和(はるまさ)から、佳乃花(かのか)一路(いちろ)との飲み会はOKだけど夜に出かけるのはダメって言われて。

 「どう言う意味!?」って聞いたら「家飲みにしろ」ってことだった。

 佳乃花(かのか)温和(はるまさ)がそんなワガママを言ってくるの!って愚痴ったら、「仲直りできたんだね」って喜んでくれた。

 ばかりか――。

「せっかく良い感じになった2人に水差すようになったらマズイし、音芽(おとめ)()で飲もう!」って言ってくれて。


***


「今日は本っ当ごめんねっ」

 当日開口一番そう言って頭を下げたら「気にすることないよ。でも気になるんなら――」って、先日の佳乃花(かのか)宅での飲み会後に起きたあれこれを根掘り葉掘り告白させられる羽目になった。

 もちろん、その中には取り戻した記憶の話や、乗り越えたトラウマのこと、それから――。

温和(はるまさ)の言う、私との関係を明確にするって……どういう意味だと思う?」

 眉根を寄せて聞いたら、佳乃花(かのか)が「さすが鈍感娘」って笑うの。

 鈍感って温和(はるまさ)にもよく言われるけど……そこまでひどくないと思うんだけどな?

「わ、私だって……何となく……こういう意味なのかな?って言うのは……あるんだよ?」

 ムキになって言ったら「音芽(おとめ)ちゃんはどういう意味だと思ってるの? 言ってごらん」ってニヤリとされた。

「うー。だからっ。その……職場のみんなに私たち付き合っていますって宣言するってことかなって」

 そう言ったら佳乃花(かのか)が「あー、霧島(きりしま)先輩、お疲れ様ですっ!」って温和(はるまさ)の部屋の方に向かって頭を下げるの。
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