オトメは温和に愛されたい
三岳(みたけ)は……その……朝日さんと……どういう話になってるんだ?」

 佳乃花(かのか)がキッチンに消えると同時に、まるで場を持たせるみたいに温和(はるまさ)が口を開いて、私は少しびっくりしてしまった。
 だって……何だか温和(はるまさ)にしては物言いがまどろっこしいんだもの。
 いつもの彼ならもっとハッキリとした口調で話しかけてる気がする。

 窺うように彼の横顔を見詰めたら、明らかにそっぽを向いてかわされてしまった。

 もぉ! だから何なのよ、さっきからっ!

 仕方なく眼前に置いたままにしていた飲みかけのビールを一気にあおる。

 佳乃花(かのか)の言葉じゃないけど、こうなったらお酒の力を借りてやるんだから!
 いや、正直な話、酔ってなくても《《そんなふり》》をして大胆に攻めてやる!

 押しかけてきたくせに目を合わせようとしない温和(はるまさ)に段々モヤモヤしてきて、私はそんなことを思ってしまった。

 過激派でごめんなさい。


***


 佳乃花(かのか)がグラスを2つと缶ビールを2缶、それから“炙りたらこ”とお箸を小皿に載っけて戻ってくる。
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