オトメは温和に愛されたい
***

音芽(おとめ)、ろくに後片付けもしないまま、ごめんね」

 玄関先で靴を履いた佳乃花(かのか)から手をギュって握られて、私はフルフルと首を横に振る。

「そんなっ。気にしないで。私もこの前2人の家に行った時、散らかしっぱなしで帰っちゃったもの。だから……」

「おあいこ?」
「おあいこ!」

 佳乃花(かのか)が私の言葉に被せるようにそう言ってきて、「おあいこ」の声がハモって、2人で顔を見合わせてクスクス笑い合う。

一路(いちろ)佳乃花(かのか)のこと、絶対絶対誰よりも大切にしてあげてよね!?」

 言ったら、「お前に言われなくてもそのつもりだよ。音芽こそ……」

 そこで声を低めて私の背後にいる温和(はるまさ)をチラチラと気にしながら「その……幸せにしてもらえよ」って言ってくれて。

「一路、ありがとう」

 私は一路の言葉に思わず涙ぐんでしまう。

 なんでだろ。

 き、きっとお酒の……せいで感情が(たかぶ)っちゃってるのね。

 あ、でもね、でもね、一路。

 私は温和(はるまさ)に幸せにしてもらうんじゃないよ?
 温和(はるまさ)と一緒に幸せになるの!
 あなた達も、そうでしょう?
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